2015.04.30更新

新宿区四谷の弁護士水野智之です。
以前,寄与分について書きましたが,寄与分と並んで問題となるのが特別受益です。
寄与分についてのリンクはこちら↓

療養看護と寄与分

 

特別受益も遺産分割の際によく主張される争点です。
例えば,学費や結婚費用などが特別受益としてよく主張されます。

学費であれば相続人の一人が,被相続人から大学に進学するための入学金を支払ってもらったり,在学中仕送りを受けていたが,他の相続人は大学進学できず,中卒や高卒で働きに出てしまったような場合が考えられます。確かに,少ない学費の相続人がその不公平を相続で是正してほしいと考えることは理解できない話ではありません。

 

しかしながら,家庭裁判所は原則として、学費を特別受益と認めません。
そもそも、教育というのは、子供の個性に応じて行われるもので,全員が平等に行われなくてはならないという考え方になじまないからです。

ただし,私立の医学部のような比較的高額な入学金や海外留学の費用であれば,被相続人の生前の資産状態や家庭状況に照らして,特別受益として認められやすいです。

最終的には個々の事案に応じて判断が分かれるところです。

 

また,結婚費用については,結婚の際の挙式費用や結婚の支度金・嫁入り道具などが相続人の一人にだけ支払われたような場合が考えられます。特に,条文上,「婚姻のため」の贈与が規定されているため認められやすそうです。

 

しかしながら,結婚の際の費用も被相続人の生前の資産状態や家庭状況に照らして,通常の婚姻の支度程度では認められていません。条文上,「婚姻のため」の贈与は「生計の資本」と同列に置かれていることからもわかるように,ある程度まとまった多額なものでなければ認められにくいのです。

要は,普通親だったらこのくらいのことはしてあげるよねというレベルであれば,特別受益と認められることはまずありません。

また,挙式費用は遺産の前私とは考えられないので。通常,特別受益とは認められません。

 

なお,特別受益は相続人本人が受けた受益に限られるのが原則です。したがって,例えば,相続人の子が被相続人である父(子から見れば祖父)から学費の援助を受けても相続人の特別受益にあたりません。

 

相続には誤解を招きやすい問題がいくつもありますので,弁護士にご相談されながら進めていくことをお勧めします。

 

投稿者: 弁護士 水野 智之

2015.04.27更新

新宿区四谷の弁護士水野智之です。

離婚問題でよくあるご相談として,夫または妻の浮気が発覚したのだが,不貞の相手方に慰謝料を請求したいというものです。

 

この場合,証拠があるのかどうかが一番重要な点にあります。

男女関係をうかがわせる写真やメールなどがあれば十分です。

探偵に動向を探ってもらうということをされる方も多いですが,調査費用が結構高いので,後述の相場の問題も念頭に置かれたほうがいいと思います。

 

証拠が十分にあって,慰謝料請求ができるとしても,その相場というのはお考えになるほど高いものではありません。

離婚しないのであれば50万円から150万円程度,離婚する場合でも300万円を超えることはないと言っていいです。

大半の方はこれでは安すぎるとおっしゃいますが,裁判所の慰謝料の考え方についてはほぼ固まっていますので,これを念頭に戦略を立てる必要があります。

 

また,離婚事件一般の慰謝料についても,以前ブログに書いたのでご参考にしてください↓

離婚事件の慰謝料

 

もうひとつ気を付けなくてはいけないのは,不貞の相手方への慰謝料請求が,不貞をしている夫または妻からの離婚請求を誘発するおそれがあるということです。

離婚はしたくないけれども,不貞の相手方は許せないという心情は理解できますが,不貞をしている夫または妻の気持ちを変えるというのは容易いことではありません。

もっとも,不貞をしている夫または妻は有責配偶者となりますから,離婚交渉ではかなり有利な立場に立つことは間違いないです。

 

また,不貞の相手方からは,決まって,婚姻関係が破たんしていたという抗弁が出されますが,裁判所ではほぼ認められないと言っていいでしょう。

浮気を正当化するほどの婚姻関係の破たんがあるケースというのはほとんどありません。単に別居していたという程度では破たんの抗弁は認められませんが,(特に妻の不貞ですが)夫の暴力の問題が絡んでくると,破たんが認められるケースもありえます。

慰謝料請求を受けた方の場合,有利な事情がなければ迅速な解決を目指す方が得策といえます。

 

不貞の慰謝料請求で悩まれている方,初回30分無料相談を行っていますので一度ご相談ください。

担当弁護士水野をご指名ください。

投稿者: 弁護士 水野 智之

2015.04.23更新

新宿区四谷の弁護士水野智之です。

昨晩,萩原流行さんが交通事故でお亡くなりになったというニュースがありました。ご冥福をお祈りいたします。

 

さて,今回の交通事故ですが,ニュースによると,「現場は片側3車線の直線。一番左側の車線を進行していた護送車が、駐車車両を避けようと中央に車線変更した後、中央車線後方を走っていた萩原さんのオートバイが何らかの原因で転倒して護送車に接触。」とのことです。

今回の事故では萩原さんは護送車に接触したため,交通事故が起きたようなので,護送車側にも過失が認められやすそうですね。

 

これに対して,護送車に接触せず,これを回避しようとして交通事故に遭ってしまったというケースも考えられます。

接触しないで交通事故なんてありうるのかと思われるでしょうが,意外と非接触型の交通事故のご相談もよくあるのです。

このような非接触の交通事故の場合でも,過失があるといえるでしょうか。

非接触の交通事故でも加害者側に不適切な行動があれば過失を認められる可能性はあります。例えば,進路変更が急であったり,合図をしないで車線を変更したような場合です。

また,こういった事情がなくても,今回のようなケースでは車線を変更するにあたって後方確認は必要ですから,過失が全くないという判断は困難かと思われます。

逆に,被害者側に過剰反応があった場合には,被害者側の過失も考慮されて過失相殺されることになります。

特に,転倒まで至るようなケースは過剰な反応によるところが大きいと思われます。

 

交通事故は誰にでも起こりうることなので気を付けたいですね。

 

 

投稿者: 弁護士 水野 智之

2015.04.21更新

新宿区四谷の弁護士水野智之です。

前回,遺産が不動産しかない場合の相続について書きましたので,今回は遺産が預貯金しかない場合の相続について書いてみます。

前回のブログのリンクはこちら↓

遺産が不動産しかない場合の相続

 

最高裁の判例は,預貯金について,遺産分割をするまでもなく,相続開始と共に法律上当然に分割され,各相続人はその相続分に応じた権利を承継するとしています。

そうすると,各相続人は遺産分割協議を経なくても,自分の法定相続分にしたがって,銀行に払戻請求が出来るようにも思えます。
しかし,金融機関の多くは,預金の払戻しには相続人全員の実印を押印した同意書と印鑑証明書の提出を求めてきますので,相続人単独での払戻請求には応じてもらえません。
そのため,通常は,預貯金についても遺産分割協議をすることとなります。

 

ただ,預貯金が遺産分割協議の対象となるのは相続人全員の合意がある場合に限られるので,もし,相続人のうち一人でも預貯金を遺産分割協議の対象にはしないと言い出したら,家庭裁判所に調停を申し立てても解決を得られないことになってしまいます。

この場合は,弁護士に依頼して金融機関と交渉してもらい,それでも払い戻しに応じなければ,訴訟を提起することになります。そして,最終的に特段問題がなければ,払い戻しが認められている例が多いようです。

 

さて,そうなると,相続人の一人に特別受益や寄与分があるケースで,相続人の一人が唯一の遺産である預貯金は遺産分割の対象としないと言い出して,自己の相続分を金融機関と交渉して引き出してしまった場合,どのような解決になるのかとても悩ましい問題があります。

 

(例)遺産である預貯金が3000万円 相続人は二人(AとB) 相続人の一人(A)に1000万円分の特別受益がある

 

この場合,遺産分割協議ができれば,BはAの特別受益を主張することができます。そうすると,Aの相続分:(3000万円+1000万円)÷2-1000万円=1000万円 Bの相続分:(3000万円+1000万円)÷2=2000万円 となります。

ところが,特別受益があるとされる相続人Aは,遺産分割協議をしないで,遺産の半分である1500万円の払い戻しを受けることができてしまいます。そうすると,Bは残りの1500万円しか取得できないことになってしまうのです。

 

また,葬儀費用などの用途のためであれば,預貯金の一部の払い戻しが認められることもあります。

 

なお,定額郵便貯金は例外です。郵便貯金法で,定額郵便貯金について,「一定の据置期間を定め,分割払戻しをしない条件で一定の金額を一時に預入するもの」とされていることから,郵便貯金法は定額郵便貯金債権の分割を許容するものではなく,定額郵便貯金は,「その預金者が死亡したからといって,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである」というのが最高裁の立場です。

投稿者: 弁護士 水野 智之

2015.04.20更新

新宿区四谷の弁護士水野智之です。

先日,根津神社に行って,つつじを鑑賞してきました。

きれいだったので,ブログにアップしてみます。

 

つつじ祭り

色とりどりのつつじが咲いていました。 

 

つつじ祭り2

 

つつじ祭り4

白いつつじもきれいですね。

 

 

 

つつじ祭り3

 今日はいつもと趣向を変えてみました。

少しでも和んでいただければ幸いです。

 

投稿者: 弁護士 水野 智之

2015.04.17更新

新宿区四谷の弁護士水野智之です。

財産分与でよくあるケースとして,婚姻前から有していた財産,婚姻中に親族から受けた贈与や相続によって承継した財産がある場合があります。

これらは特有財産と言って,財産分与の対象から外れます。

 

問題は特有財産と立証できるかどうかなのですが,これは特有財産であると主張する当事者が立証しなくてはなりません。

婚姻前から持っていた預貯金とかであれば分かりやすいですね。ただ,普通預金のように出入りが多いものについては,特有財産と認められないケースもあるので注意しなくてはなりません。

 

また,婚姻中に得た財産については夫婦共有財産であると推定されます(民法762条)。

そのため,贈与や相続によって得た財産については,証拠がなければ財産分与の対象に含まれることになってしまいます。

贈与契約書や遺産分割協議書があれば問題ないですが,特に前者はないことが多いですから,預金通帳などで具体的にお金の流れが証明できるようにしておかなくてはなりません。

 

また,不動産を購入するときに,頭金を親族からの贈与等によって捻出することがよくあります。

この場合,具体例を挙げて説明すると次のようになります。

 

(例) 購入時3000万円 夫が親族から受けた贈与(頭金)300万円 住宅ローンは完済済み 財産分与時の評価は2000万円

 

親族から贈与を受けた金額300万円は3000万円の1割に相当します。

これを現在の評価額に引き直して計算すると,2000万円の1割は200万円に相当します。

したがって,200万円が夫の特有財産となり,2000万円から200万円を差し引いた1800万円が財産分与の対象となるのです。

 

財産分与については以下の記事もご参照ください。

退職金の財産分与
離婚と住宅ローン(財産分与の問題)

投稿者: 弁護士 水野 智之

2015.04.15更新

新宿区四谷の弁護士水野智之です。

交通事故の相談で,保険会社の人の態度が悪い,といったご相談を受けることがよくあります。

保険会社からすれば,交通事故の被害者というのは,あくまで保険契約者の相手方であり,親身な対応を期待するのは無理からぬところがあるかもしれません。

 

ただ,だからと言って,保険会社の言うがままに示談をしなくてはならないということではありません。

保険会社は,往々にして被害者の方の無知に付け込んで,被害者の方に不利な示談を突きつけてきます。

保険会社から提示されてきた書面を見ていると,金額が低く,交渉の余地があるケースがほとんどです。

 

ただ、赤い本の基準に従って増額できるのは、実際には、弁護士が代理人になった場合のことです。

自分で交渉しようと思っても,専門的な言葉や計算方法で保険会社はうまく言いくるめようとします。

 

交通事故問題については,弁護士に頼まれることを,特に強くお勧めします。

初回30分無料相談を行っております。また。交通事故問題は着手金無料でお引き受けしていますので一度ご相談ください。

投稿者: 弁護士 水野 智之

2015.04.14更新

新宿区四谷の弁護士水野智之です。

今週の天気は雨が多いですね。

 

さて,被相続人が亡くなった後,意外と揉める要素があるのが,遺産が不動産しかなく,あとは僅少な預貯金しかないというケースです。

相続人全員が仲がよく,不動産を共有にしても問題がない場合や,みんなで協力して売却できるような場合はいいのですが,多くのケースでは,自分はお金がほしい,別の人は不動産にずっと住んでいたから今後も住み続けたい,と言ってまとまらないことが多いです。

しかも,特別受益や寄与分の問題が絡んでくることもあります。

 

また,不動産の評価の問題も絡んできます。

通常,このケースでは,不動産をほしい人が他の相続人に相続分相当額の代償金を支払って解決することが多いです。

しかし,不動産をほしい人はできるだけ不動産の評価を安くしたいと考えますし,代償金をもらう側の人はできるだけ不動産を高く評価してほしいと考えます。

そのため,遺産分割調停では,不動産業者の査定書などで,お互いに価格を出しあって,金額を合意することになります。たいていの場合,高額な鑑定費用をかけるくらいならと,ある程度のラインで落ち着くことになります。

 

しかし,代償金の額で折り合えなかった場合,裁判所の審判で判断されることになるのですが,この場合は相続人全員の共有という判断が下ることも多いです。

そうなると,今度は共有物分割訴訟を起こすために地裁に場を移すことになるのです。

公平な解決ではあるのですが,問題を先送りにするだけですね。

悩ましい問題です。

 

投稿者: 弁護士 水野 智之

2015.04.10更新

新宿区四谷の弁護士水野智之です。

離婚するにあたって問題になってくるのが別居中の生活費(婚姻費用)や養育費です。

家庭裁判所では,算定表という表に双方の収入を当てはめて算出した金額を払うという結論になるのが通常です。

 

ところが,算定表では給与所得2000万円を超える人や自営の所得が1409万円を超える人についてはカバーされていません。

そのため,こういった高額所得者の場合,算定表から直ちに婚姻費用や養育費の金額を算出することができません。

もっとも,婚姻費用や養育費は,もともと,計算式があり,これに当てはめて計算すれば具体的な金額を算出することができます。

その計算式は,基礎収入(通常,給与所得者は34%~42%,自営業者は47%~52%)を算出して,生活費指数に応じて按分するというものです。

具体的な計算方法をお知りになりたい方は,弁護士に相談されるといいでしょう。

 

ただ,高額所得者の場合,高額な年収をすべて生活費に充てているということはまれであり,一部は資産形成や負債の返済に充てられていることが多いため,単純に上記の計算式を使って判断されるわけではありません。

個別具体的な事案に応じて,生活費に充てられている部分を割合的に算出したうえで基礎収入を算出し,婚姻費用や養育費が定められています。

また,総収入の額が算定表の上限額に比較的近い場合には,概ね算定表の上限額を婚姻費用の分担額と認定する場合が多いです。

そのため,算定表の金額を超えるような,極端に高額な婚姻費用や養育費というのはなかなか認められないのが現状です。

 

婚姻費用や養育費には算定表だけでは解決できない様々な問題があります。

婚姻費用や養育費で悩まれている方は,一度,ご相談ください。

投稿者: 弁護士 水野 智之

2015.04.08更新

新宿区区四谷の弁護士水野智之です。 

交通事故のご相談で一番多いのが慰謝料ですが,休業損害についても特定のお仕事の方には悩ましい問題があります。

 

以前,主婦の休業損害について触れましたが,ほかにも,個人事業主の休業損害が問題となることもあります。

 

主婦の休業損害についてのリンクはこちら↓

主婦の休業損害

 

個人事業主の場合には確定申告書の控えや市区町村の住民税の納税証明書など公文書をもとに収入を認定するのが原則です。

しかし,収入があるのに税務申告していないとか税務申告以上の収入を超える収入があったと主張したい場合にはさらなる証拠が必要となってきます。具体的には,会計帳簿類などの客観性の高い書面で証明する必要があります。そして,可能な限り,修正申告をした方がいいでしょう。

それでも,立証が困難な場合には賃金センサスを利用することも考えられますが,安易な賃金センサスの利用は裁判所も認めないので,できる限り被害者は証拠を集めて出すという作業を怠るべきではありません。


ただ,個人事業主の方の場合,休業損害の立証には困難が付きまといますので弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めします。

交通事故事件の場合は着手金無料でお引き受けできますので,ぜひご相談ください。ほとんどのケースで弁護士報酬以上に示談金を得られるメリットがあります。

03-6380-4935

弁護士水野をご指名ください。

 

投稿者: 弁護士 水野 智之

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