2015.04.21更新

新宿区四谷の弁護士水野智之です。

前回,遺産が不動産しかない場合の相続について書きましたので,今回は遺産が預貯金しかない場合の相続について書いてみます。

前回のブログのリンクはこちら↓

遺産が不動産しかない場合の相続

 

最高裁の判例は,預貯金について,遺産分割をするまでもなく,相続開始と共に法律上当然に分割され,各相続人はその相続分に応じた権利を承継するとしています。

そうすると,各相続人は遺産分割協議を経なくても,自分の法定相続分にしたがって,銀行に払戻請求が出来るようにも思えます。
しかし,金融機関の多くは,預金の払戻しには相続人全員の実印を押印した同意書と印鑑証明書の提出を求めてきますので,相続人単独での払戻請求には応じてもらえません。
そのため,通常は,預貯金についても遺産分割協議をすることとなります。

 

ただ,預貯金が遺産分割協議の対象となるのは相続人全員の合意がある場合に限られるので,もし,相続人のうち一人でも預貯金を遺産分割協議の対象にはしないと言い出したら,家庭裁判所に調停を申し立てても解決を得られないことになってしまいます。

この場合は,弁護士に依頼して金融機関と交渉してもらい,それでも払い戻しに応じなければ,訴訟を提起することになります。そして,最終的に特段問題がなければ,払い戻しが認められている例が多いようです。

 

さて,そうなると,相続人の一人に特別受益や寄与分があるケースで,相続人の一人が唯一の遺産である預貯金は遺産分割の対象としないと言い出して,自己の相続分を金融機関と交渉して引き出してしまった場合,どのような解決になるのかとても悩ましい問題があります。

 

(例)遺産である預貯金が3000万円 相続人は二人(AとB) 相続人の一人(A)に1000万円分の特別受益がある

 

この場合,遺産分割協議ができれば,BはAの特別受益を主張することができます。そうすると,Aの相続分:(3000万円+1000万円)÷2-1000万円=1000万円 Bの相続分:(3000万円+1000万円)÷2=2000万円 となります。

ところが,特別受益があるとされる相続人Aは,遺産分割協議をしないで,遺産の半分である1500万円の払い戻しを受けることができてしまいます。そうすると,Bは残りの1500万円しか取得できないことになってしまうのです。

 

また,葬儀費用などの用途のためであれば,預貯金の一部の払い戻しが認められることもあります。

 

なお,定額郵便貯金は例外です。郵便貯金法で,定額郵便貯金について,「一定の据置期間を定め,分割払戻しをしない条件で一定の金額を一時に預入するもの」とされていることから,郵便貯金法は定額郵便貯金債権の分割を許容するものではなく,定額郵便貯金は,「その預金者が死亡したからといって,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである」というのが最高裁の立場です。

投稿者: 弁護士 水野 智之